逸木裕のWebSite

過去ログ

2022/04/26 05:01

昨日は日本推理作家協会賞の選考会があり、僕の作品「スケーターズ・ワルツ」が短編部門を頂戴した。賞をいただくのはデビュー時の横溝正史ミステリ大賞以来であって、推協賞はいちミステリファンだったころから大好きな賞だったので大変嬉しい。いやあー、とても嬉しい。

「スケーターズ・ワルツ」はもともと賞の遡上に上げていただく前から僕にとっては特別な作品で、作品の完成から発表、昨日の受賞に至るまで、一年以上もずっと不思議な流れを感じている。この辺はおいおい、受賞の言葉やら日記やらで書くかもしれない(ちょっと気軽に書けないことが多いのです)。ただまあ点々と起きた事象を勝手につないで都合のいいストーリーに仕立て上げ、悦に入るということだけはしないようにしたい。フィクションの書き手として、現実を手前勝手にフィクション化して解釈するのはよくないと思っているからである。奇縁は奇縁のまま、そこにフィクションを上乗せすることなく、自分の中に置いておきたいなと、そんなことも思っております。

とはいえ今後より良いものを書けるように邁進していきたい。自分を押し上げてくださったすべての皆様に感謝です。

2022/04/22 18:39

昨日血管系の手術をしまして、今日は終日引きこもり生活。手術も点滴も全身麻酔も初めてで、こんな感じなのかと参考になった。全身麻酔で失神する前に「この麻酔はなんなんですか?」とか取材モードで聞いていたらしく、看護師さんにも笑われてしまった。まあでも行動習慣が作家らしくなれたのかなと少し嬉しくもあった。

6月刊の新刊は入稿し、ぼちぼちゲラを読んでいる。同時並行で8月刊の新刊の改稿をしつつ、その後の企画と初稿の執筆をやっている。とりあえず色々多作してみようかと今年はあれこれ書いているのだが、もうちょっと企画に時間をかけて、書くものの難易度を上げたいなと感じている。まあとりあえずそれは先の話で、当面は日々の仕事をこなしていくのみである。

最近読んだ本としては、朝井リョウさんの『正欲』がとても面白かった。人間の底を照らしだすような心理描写と、明確な謎がないのにページを繰る手が止まらないストーリーテリングの妙に大変感心した。『桐島、部活やめるってよ』『何者』と同じく、コミュニティ内で流れている価値観を相対化し、その価値観を盲信している人間に対し、価値観の外側にいる人間が闘争を仕掛けていくような構造の物語になっているのだが、学校、就活と空間が限定されていた二作に対し『正欲』は我々の社会そのものまで物語空間が広がっていて、より深度のある話になっていると感じた。群像劇を描き分ける筆は冴え渡っていて、どの登場人物にも魅力がある。価値観を盲信している人間も、それが欺瞞だと気づいている人間も、等しく迷いながらなんとか生きている人間であって、フラットな存在なのだと看破していくあたりも見事だと感じた。

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