逸木裕のWebSite

作品一覧

四重奏

「弦楽器をテーマにした音楽ミステリを」という依頼を受け、最初は弦楽四重奏の話としてて書きはじめたが、どうにもエッジが立たなかったので大幅に立て直している間にチェリストたちの物語へと変容した。僕は長年のクラシック愛好家なのだが、「自分は本当にクラシック音楽を聴けているのか」という問題意識をずっと抱えており、鑑賞と錯覚の物語をミステリのフォーマットで書くという小説となった。

単行本:光文社(2023年)

世界の終わりのためのミステリ

もともと『ヨコハマ買い出し紀行』など、人類が静かに世界の終わりを迎えているようなSF作品が好きで、そういった究極の非日常の世界に〈日常系ミステリ〉をぶち込んでみたら面白いのではないかと思いはじまった企画。その後設定をどうするかということになり、半永久的に生きなければならないアンドロイドを主人公に据え、実存的なテーマが演繹された。続編を書く前提ではじまっているのでなんとか最後まで書きたい。

単行本:星海社フィクションズ(2023年)

祝祭の子

「本人も自覚すらできないうちに深刻な加害者になってしまった子供たちは、どう生きていけばいいのか」というテーマを、冒険小説的な枠組みの中で実現できないかと試行錯誤して書いた。自分の作品の中ではもっともリビドーが迸っているのではないかと思っている。

単行本:双葉社(2022年)

風を彩る怪物

学生のころにオルガンビルダーという仕事があることを知り、またヨーロッパを回った際にオルガンの多彩な演奏に魅了されたこともあり、いつかこの職業、この楽器について書きたいと思っていた。本作はとにかく横田宗隆オルガン製作研究所さんに支えていただいた。僕が探した限りオルガンビルダーの資料がほとんどなく、現場のかたにインタビューして掘り下げる必要があったのだが、ここまで書けたのはしつこい取材に答えてくださった横田さん、加藤さんのおかげである。本当にありがとうございました。

単行本:祥伝社(2022年)

五つの季節に探偵は

2018年から3年ほど書いてきた榊原(森田)みどりシリーズの連作短編集。
みどりは書く側からすると大変便利なキャラクターで、あらゆる謎に猟犬のように噛みつき、何が何でも解決まで持っていく好奇心と行動力を持ち合わせている。探偵がここまでアクティブだと様々な謎を書けるもので、ミステリというジャンルでできることを色々やろうと、倒叙ありフィニッシュイング・ストロークあり〇〇ありのバラエティ豊かな作品にできたと思っている。

収録作 : イミテーション・ガールズ、龍の残り香、解錠の音が、スケーターズ・ワルツ、ゴーストの雫

単行本:角川書店(2022年)
文庫本:角川文庫(2024年)

空想クラブ

僕は自分から「こういうものを書きたい」と企画を出すことがほとんどなのだが、本書は編集者から「青春ミステリ」「部活のようなクラブが出てくるもの」とオーダーがあって書いた。そのころ宇宙のことをよく考えていたので(雑)、宇宙・クラブ・ミステリ……などとグルグル自分の中で考えてまとまったものである。宮古島が冒頭に出てくるので、方言を使うに際し言語学者のかたにアドバイスをいただいたりした。

単行本:角川書店(2020年)

銀色の国

「もうだめ。死にたい」とツイートを繰り返す浪人生のくるみ。ある日、フォロワーのひとりからDMが届き、謎のグループ〈銀色の国〉に導かれる。
一方、NPO法人で自殺防止に奔走する晃佑のもとに、思い出深い相談者が自殺したと悲報が届いた。原因を調べるうちに〈銀色の国〉との関わりが判明してくるか、それは恐ろしい計画の一端に過ぎなかった。

単行本:東京創元社(2020年)
文庫本:創元推理文庫(2023年)

電気じかけのクジラは歌う

ヒトはもう、創作らなくていい――人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ「Jing」が普及し、作曲家は絶滅した。
「Jing」専属検査員である元作曲家・岡部の元に、残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。
そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していく――。


単行本:講談社(2019年)
文庫本:講談社文庫(2022年)

星空の16進数

ウェブデザイナーとして働く17歳の藍葉は、”混沌とした色彩の壁”の前に立つ夢をよく見る。
それは当時6歳だった自分が誘拐されたときに見た、おぼろげな記憶。
あの色彩の壁は、いったい何だったのだろうか――。
色と誘拐をめぐる青春探偵小説。

単行本:角川書店(2018年)
文庫本:角川文庫(2021年)

少女は夜を綴らない

“人を傷つけてしまうかもしれない”という強迫観念に囚われている、中学3年生の山根理子。
彼女は“身近な人間の殺害計画”を“夜の日記”と名付けたノートに綴ることで心を落ち着け、どうにか学校生活を送っていた。
そんな彼女のもとに、人を殺してほしい少年、悠人がやってくる――。

単行本:角川書店(2017年)
文庫本:角川文庫(2020年)

虹を待つ彼女

デビュー作なのでかなり思い入れの深い作品。
アマチュア時代に書いた四作目の長編で、当時は〈知らない世界を書きたいから詳しいことは封印しよう〉と、本業だったエンジニアリング周りのことは書いていなかったのだが、いまひとつ結果が出なかったため解禁した。最初に冒頭の着想があり、そこから演繹する形でストーリーが出来上がっていったのだが、当初予定していたプロットは破棄して最初の構想とは全然違う話になったため、何かを間違っていたらデビューすらできていなかったのではないかと思う。
この作品でデビューできたのは個人的にも幸運なことだと思っており、ほんと作家業は運が大きいなと感じる。


単行本:角川書店(2016年)
文庫本:角川文庫(2019年)

PAGE TOP